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令和7年より適用される「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化」について

改正趣旨

令和5年の税制改正内容で、令和7年より適用されるものとして「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」の改正があります。

 

これは、一定水準以上の株式や土地建物の譲渡所得に対する税率を引き上げるものです。

給与等の累進課税方式は、所得が高額になるにつれて最高税率45%まで上がりますが、

高所得者ほど所得に占める株式や土地建物の譲渡所得の割合が高くなる傾向にあり、

これまでは株式や土地建物の譲渡所得に対して金額問わず一律に所得税率約15%であったために、

結果的に高所得者層の負担率が下がる逆転現象が生じることがあり、これを見直すことがこの改正の趣旨となります。

改正の概要

所得税納税は、

①給与所得・不動産所得など(総合課税:税率5~45%)

②退職所得など(分離課税:税率2.5%~22.5%)

③譲渡所得など(分離課税:税率原則約15%)

と所得の内容により異なる所得税をそれぞれ計算し、合算をしたものを納税するという流れです。

 

令和7年以降もこの流れは変わりませんが、次の計算式が1つ追加されます。

 

( 所得の総合計※ - 3億3千万円 ) × 22.5% = 改正後の所得税額

※一部例外はあるが、基本的には①~③すべての所得を合算して計算する。

 

もし、上記①~③の所得税合計額よりも、改正後の所得税額が上回る場合には、

その差額を追加的に申告納税する必要があります。

試算

①給与所得1億円

②退職所得0円

③譲渡所得9億円

と仮定を置いて改正前後の影響を試算してみます。

 

【改正前】

① 給与所得 1億円 × 45% - 控除額479万円 = 約4,021万円

③ 譲渡所得 9億円 × 15.315% = 約1億3,784万円

合計 = 1億7,805万円

 

【改正後】

(1億円+9億円) ⁻ 3億3,000万円 × 22.5% = 1億5,075万円

 

【改正の影響】

1億5,075万円 ⁻ 1億3,784万円 = 1,291万円

 

※上記試算で譲渡所得を19億円と仮定する場合の影響額は約4,455万円となります。

※譲渡所得税のみ20億円と仮定する場合の影響額は約6,945万円となります。

事業承継対策への影響考察

上記の試算を見ると改正の影響は限定的と感じる方もいるかと思います。

しかし、高所得者に対して税率を変える仕組みができたことで、その税率を上げるなど、

高所得者に対する課税強化がしやすくなったと感じます。

 

また、業承継対策のひとつとして選択されるM&Aでは、会社の将来価値を査定する中で、

思いのほか企業価値がつき、多額の譲渡所得を得るケースもあります。

M&Aに際して役員退職金を取られるケースや、持株会社が存在するケースなどでも、

税制改正の影響があることからも、今回の改正にあわせた企業ごとの税金のプランニングは重要性を増していくものと感じています。

 

大きな所得が発生する前に、一度専門家にご相談をすることをお勧めいたします。