後継者が最低限知っておくべき自社株知識②
前回は、後継者が知っておくべき自社株知識として、
①現状を知る
②課題を見極める
③相談相手を知る
この3つのうち①現状を知るについて書いていきました。
今回は②課題を見極めるについてです。
「課題」とは
課題とは、人によって感じ方が違うものです。
例えば「株式に対する相続税が高い」ということを課題に感じる人もいれば、
「子供が3人いて株式が分散してしまう」ということに課題を感じる人もいます。
後継者目線で課題を見極めるとするならば、次の順番で見ていくことをお勧めします。
- 議決権は67%確保できるか
- 議決権確保するための承継資金は準備でるか
- 顔の知らない株主はいないか
まず考えるべきは、承継後「議決権の67%を確保できるか」です。
株式が分散しているケースでは、67%に達しないケースもあります。
また、兄弟2人で会社を引継ぐ場合、先代経営者がどちらか1名に株式を承継するとは限りません。
どのような割合で引き継ぐのかは非常に難しい論点ですが、通常は先代が2人の能力や力関係を見極めながら決めていきます。
「1つのお城に1人の殿様」が基本的な考え方ですが、難しい場合は「兄弟1枚岩」で経営をしていくほかにありません。
1番やってはいけないのは「50:50」、中途半端な承継は社内に争いを生む結果になります。
承継資金の確認
次に株式を承継する資金を捻出できるかどうかです。
よく「税金を安くするために株価を下げる」ことを検討する方も多く存在しますが、
会社を発展させる責任を負う後継者の立場では、株価を下げるよりも、今後どれだけ事業で利益を出すかを考えるほうが重要です。
利益あっての事業承継対策ということを忘れてはなりません。
利益さえ上がれば、例えば持株会社を活用して株式を換金する方法、役員報酬を上げる方法など、資金確保の手段が選択できます。
つまり、株価がいくら高くても、それを引継ぐ資金が確保できるのであれば、株式は承継できるということになります。
株主の確認
最後に顔の知らない株主がいないかです。
議決権は確保できたとしても、顔の知らない株主は将来の経営リスクとなります。
例えば、無議決権株式導入時には全株主の同意が必要となり、1名の株主から同意が得られないだけで無議決権株式の登記をすることができません。
顔を知っている先代の協力のもと買取交渉を進めることが望ましいです。
2018年は事業承継税制が改正となり、使い勝手がよくなりました。
新税制を活用すれば株式承継に係る納税を猶予されます。
しかし、後継者が納税リスクを背負うことには変わりなく、新税制を選択している会社は少ないのが実態です。
新税制は縛りが多く、使う前に十分な検討が求められますが、そのためにもまずは自社の課題を洗い出し、優先順位をつけることが大切です。
具体的な対策を進めるにあたっては、多くの法律が関係し、多くの専門家の力を借りる必要があります。
次回は、対策の実行にあたり必要な「相談相手を知る」ということについて書いていきたいと思います。